本文
大船渡市では、平成6年度の公共下水道の供用開始から30年近くにわたり、現行の下水道使用料を維持してきましたが、汚水の処理に必要な費用を下水道使用料だけでは賄いきれず、毎年、その不足分を市税等の公費で補てんしてきました。
このような経営状況を改善し、将来にわたって安定的かつ持続的に下水道事業を運営するため、令和4年度に経営の長期的な基本方針である「大船渡市経営戦略」を改訂しました。
経営戦略では、経営改善の取組の一つとして「公共下水道使用料」及び「漁業集落排水施設使用料」を見直す方針を定めたところであり、令和6年4月1日から下水道使用料を改定させていただくことになりました。
市では、引き続き水洗化率の向上と経費の節減を図り、より効率的かつ効果的な事業運営に努めてまいりますので、使用者の皆様の一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。
区分 | 改定の内容(税込み) |
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基本料金 | 1,540円 → 2,156円 |
従量料金 | 11㎥をこえる場合、1㎥あたり11円の引き上げ |
※ 汚水の排出量が20㎥の場合、3,476円/月となり、26.4%の改定になります。
一般家庭における1か月あたりの下水道使用料の単価は次のとおりです。
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汚水排出量 | 現行 |
改定後 |
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基本使用料 | 10立方メートルまで |
1,400円 (1,540円) |
1,960円 (2,156円) |
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従量使用料 (1立方メートルにつき) |
10立方メートルを超え 20立方メートルまで |
110円 (121円) |
120円 (132円) |
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20立方メートルを超え 30立方メートルまで |
120円 (132円) |
130円 (143円) |
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30立方メートルを超え 40立方メートルまで |
130円 (143円) |
140円 (154円) |
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40立方メートルを超え 50立方メートルまで |
140円 (154円) |
150円 (165円) |
||
50立方メートルを超え 100立方メートルまで |
150円 (165円) |
160円 (176円) |
||
100立方メートルを超え 500立方メートルまで |
160円 (176円) |
170円 (187円) |
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500立方メートルを超え 1,000立方メートルまで |
170円 (187円) |
180円 (198円) |
||
1,000立方メートルを超えるもの |
180円 (198円) |
190円 (209円) |
※下段()書きは税込み(消費税率10%)の額
汚水排出量 | 改定前 | 改定後 | 差額 |
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10立方メートルまで | 1,540円 | 2,165円 | +616円 |
15立方メートル | 2,145円 | 2,816円 | +671円 |
20立方メートル | 2,750円 | 3,476円 | +726円 |
25立方メートル | 3,410円 | 4,191円 | +781円 |
30立方メートル | 4,070円 | 4,906円 | +836円 |
4月の検針までは改定前の下水道使用料で請求となり、新しい下水道使用料は5月請求分から適用されます。
下水道には、汚水の排除、雨水の排除、公共用水域の水質保全という3つの役割があります。
汚水の排除
下水道に接続することで生活排水を適正に排除し、悪臭や害虫、感染症の発生を予防するとともに、衛生で快適な生活環境を確保します。
雨水の排除
雨水を河川等に速やかに排除することにより、浸水の防除を行います。
特に近年は、短時間にまとまって降る強い雨が多発していることから、水害への対応として、重要な役割を担う施設となっています。
公共用水域の水質保全
汚水を処理場に集め、法令等で定める水質基準を満たすよう適正に処理することにより、河川や大船渡湾等 の水質汚濁を防止し、公共用水域の水質を保全します。
下水道は、これら3つの役割を担うことから、事業に必要な経費については、個人が排出する生活排水の処理費用については受益者が負担し、雨水の排除等の公共的な役割を担う部分に関する費用については公費で負担する「雨水公費・汚水私費」という原則に基づいて負担しています。
大船渡市の汚水処理は、市が運営する公共下水道事業及び漁業集落排水事業と、個人で設置する浄化槽によって行われています。
このうち、公共下水道事業は平成6年度から主に市街地に、漁業集落排水事業は平成元年度から漁業集落において、市民の皆さんの生活環境を快適にするとともに、公共用水域の水質保全を図るための重要なインフラとして、生活排水等を処理してまいりました。
現在は、下船渡分区や立根分区を中心に管路整備を進めており、整備人口の増加に伴い水洗化人口は増加していく見込みですが、整備完了後は、人口減少に伴って水洗化人口は減少に転じる見込みです。
(水洗化人口の推移)
大船渡市の下水道事業は、その財源の多くを一般会計に依存する経営状況になっています。
令和4年度は、約6億8千万円(一般会計が負担するべき分を含む)を市の一般会計から繰入れており、財政の大きな負担となっています。
そのため、市では、将来にわたり下水道事業を健全に運営するため、令和2年度に地方公営企業法の財務規定を適用し、経営状況を明確化しました。
令和4年度の決算では約7,386万円の純損失を計上し、前の年度に続き赤字となり、厳しい経営状況になっています。
(令和4年度の決算の状況)
支出 | 収入 | |||
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委託料 | 1億8,599万円 | 下水道使用料 | 2億1,186万円 | |
人件費 | 4,238万円 | 他会計補助金 | 3億8,794万円 | |
修繕費 | 163万円 | 長期前受金戻入 | 3億5,301万円 | |
減価償却費 | 6億3,600万円 | その他の収入 | 331万円 | |
支払利息 | 1億1,469万円 | 特別利益 | 1億5,288万円 | |
その他の支出 | 1,417万円 | |||
特別損失 | 1億8,800万円 | |||
小計 | 11億8,286万円 | 小計 | 11億 900万円 | |
当年度純損失 | 7,386万円 | |||
合計 | 11億8,286万円 | 合計 | 11億8,286万円 |
借方 | 貸方 | |||
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固定資産 | 229億 151万円 | 固定負債 | 109億1,985万円 | |
流動負債 | 12億5,407万円 | |||
繰延収益 | 111億4,684万円 | |||
流動資産 | 8億9,914万円 | 資本金 | 9億1,662万円 | |
資本剰余金 | 2億9,776万円 | |||
欠損金 | △7億3,449万円 | |||
合計 | 238億 65万円 | 合計 | 238億 65万円 |
市の将来人口の推計(「日本の地域別将来推計人口(2018年推計)」)では、令和12年度には30,000人を下回り、令和14年度には28,538人まで減少する見込みとなっています。
水洗化人口は、管路を整備するまでの間は接続世帯が増加するので微増しますが、管路の整備が完了した後は、減少に転じる見込みです。
(下水道使用料の推移)
下水道施設の建設には、多額の費用を要しますが、その事業の効果は長期間にわたります。
そのため、その建設費用の財源に地方債を充当することによって、世代間の負担の公平を図っています。
これまでに借り入れた企業債については、公共下水道事業では今後十数年間において、償還のピークを迎えることとなり、年間7~8億円で推移する見込みです。
また、漁業集落排水事業では、今後の管渠更新事業での借入が見込まれるため、若干の増加傾向で推移する見込みです。
なお、企業債残高は、管渠の整備量が多い令和11年度までは借入が続くため、ピーク時には約126億円になる見込みです。
(企業債償還金の推移)
公共下水道事業
漁業集落排水事業
下水道事業は、下水道の使用者が負担する下水道使用料と市の一般会計が負担する繰入金が主な財源になっています。市では、年間6億円を超える額を一般会計から繰入れており、財源の多くを一般会計に依存しています。
この一般会計からの繰入れについては、総務省の通知により運用上の基準が示されており、この通知に基づく繰入は基準内繰入とされております。
また、この基準に基づかない繰入れは基準外繰入とされており、下水道使用料で賄いきれない財源不足分を補っています。
本市においては、下水道が整備途中であるために、下水道使用料のみでは必要な経費を賄いきれないことから、多額の基準外繰入れを行っております。
しかし、本来下水道使用料で賄うべき経費を一般会計からの基準外の繰入れに依存する状況は望ましくないので、基準外繰入れを縮減していく必要があります。
(一般会計繰入金の将来推移)
公共下水道事業
漁業集落排水事業
一般会計からの繰入れに依存する経営状況を改善するため、市では、PPP(官民連携)方式を導入して、浄化センターの施設・設備の更新や維持管理を包括的に委託するなどの経営合理化に努めているところですが、人口減少や施設の老朽化など、下水道事業の運営は今後一層厳しさを増すものと予想されます。
そのため、市では、改めて経営の中長期的な方針を定めるため、令和4年度に経営戦略を改訂することとしました。
経営戦略改訂の際の財政シミュレーションでは、このままの経営を続けた場合、下水道使用料収入は将来の人口減少に伴い減収する見込みとなりました。また、事業収支では1億円を超える赤字が毎年度計上され、令和14年度には累積赤字が20億円を超える見通しとなりました。
そのため、下水道事業の経営基盤の安定と事業の継続性を確保するため、「財政の健全化」「投資の効率化」「施設管理の最適化」の3つを基本方針とする経営戦略の改訂案を策定し、大船渡市公共下水道事業運営審議会の答申を得た後、市議会全員協議会での協議を経て、令和5年3月に新たな経営戦略を策定しました。
下水道使用料の改定については、この経営戦略の基本方針である「財政の健全化」における取組の一つとして、下水道使用料を適正な水準に見直すため、これまで1度も改定してこなかった下水道使用料を段階的に3回改定することとしているものです。
Qいつから値上げするのですか。
A令和6年4月に使用した分(5月の請求分)から新しい下水道使用料を適用します。
Q一般家庭ではどれくらいの値上げになるのですか。
A 大船渡市内の各家庭の汚水排出量は、約76%の家庭で20㎥以内となっております。汚水の排出量が20㎥の場合、3,476円(改定前2,750円)となり、726円の値上げになります。
Qなぜ改定する必要があるのですか。
A下水道事業は、雨水公費、汚水私費という考え方に則り、雨水の処理費用については市で負担しますが、汚水(生活排水)の処理費用については、使用者が負担することが適当でない費用を除き、使用した水量に応じて下水道使用料で賄う必要があります。
しかし、現在の下水道使用料の水準では、汚水の処理に必要となる費用を賄うことが出来ず、不足する分を公費で補てんしている状況が続いております。
下水道使用料で賄うべき経費を公費で補てんすることは望ましくありませんので、この状況を改善するため、下水道使用料の改定を行うものです。
Q前回の改定はいつですか。
Aこれまで、消費税率の改定による変更を除き、下水道使用料の改定は行っておりません。
Q下水道使用料を改定しないとどうなりますか。
A下水道の維持管理や更新にかかる費用は、皆様から頂いている下水道使用料で賄うことが原則ですが、現状は下水道使用料のみで必要な費用を賄えておらず、不足分を公費で補っている状況が続いています。
仮に下水道使用料を改定しない場合、処理施設や管路の更新などの必要な事業が計画的に実施できなくなり、汚水処理に支障が生じる恐れがあります。また、下水道使用料の改定を先送りすることは、負担を将来に先延ばしすることになるので、次の下水道使用料の値上げ幅を大きくしてしまうことにもなりかねません。
Q不足する汚水処理費用をこれからも公費で補うことはできないのですか。
A現在、汚水処理に必要な費用のうち、下水道使用料で賄いきれない分を公費で補てんしています。しかし、この公費には、下水道の恩恵を受けない市民の方が納めている税金も含まれています。
そのため、下水道を使用する受益者の負担による健全な下水道経営を行う必要があります。
Q今まで、どのような経営努力を行ってきましたか。
A下水道事業の経営改善のため、包括民間委託の実施による業務の効率化による経費節減を図ってきたほか、水洗化を促進するために未接続世帯への戸別訪問などを実施しています。
また、現在の公共下水道の計画区域について、合併処理浄化槽の普及状況や集合処理と個別処理による経済性等を検証し、整備対象区域の見直しの必要性を検討することとしています。
Q県内の他の自治体ではどうなっていますか。
A汚水の排出量が20㎥の場合、気仙管内の市、町の下水道使用料は3,410円から3,630円になっており、改定後の当市の下水道使用料と同程度の水準になっています。
また、県内の他の自治体と比較しても当市の下水道使用料はかなり低い水準にあるうえ、改定後においても他の自治体と同程度の水準になります。
Q改定に関する周知はどのように行っていますか。
A市の公式ホームページや広報おおふなとのほか、SNSによる周知を図ってまいります。
Q燃料価格や食料品等の高騰で生活が苦しいのですが、救済措置はないのですか。
A今回の見直しは、本来、下水道使用料で賄うべき汚水処理費の全部を回収できる水準まで引き上げるものではありません。そのため、引き続き一般会計からの繰入れにより賄うという状況に変わりはありません。
本市の下水道使用料は、県内他市町村の下水道使用料水準や、現在の汚水処理費に対する下水道使用料の割合等を考えた場合、市民の皆さんへの過度な負担を求めているものではないと考えておりますので、救済措置は予定しておりません。ご理解をお願いします。
Q今後も下水道使用料を改定する予定はありますか。
A下水道使用料の改定は、下水道事業の長期的な経営方針である経営戦略の方針に基づき実施することとしたものであり、経営戦略では、安定した経営と事業の継続性の確保のため、令和14年度までに3回の見直しを行う方針としております。
なお、この経営戦略については、取組の効果検証や中間年の見直しなどの進捗管理を行いながら、必要に応じて見直しを行うこととしておりますので、その際に、見直しの回数や実施時期なども、その時の経営状況に応じた内容に更新する予定です。