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更新日:2024年02月16日
令和7年2月21日の令和7年市議会第1回定例会本会議において、教育委員会の小松教育長は、令和7年度における教育行政施策について所信の演述を行いました。
なお、通例であれば、教育振興基本計画に沿って、令和7年度の主要な施策を述べるところですが、令和7年2月19日に本市三陸町綾里字田浜下地内で発生した林野火災の鎮圧に向けて、多くの関係者が消火活動に鋭意取り組んでいることに鑑み、主要施策の説明については、資料(「教育委員会教育長演述要旨」)の配布をもって代えることとしました。
以下、その内容をお知らせします。
演述内容
令和7年大船渡市議会第1回定例会の開会に当たり、教育行政施策について所信を申し述べさせていただきますので、議員各位を始め、市民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。
さて、市民一人一人のウェルビーイング向上と、持続可能なまちづくりを実現するためには、社会の変化に柔軟に対応できる知識や判断力と豊かな人間性を備えた人材が不可欠であります。
そのため、教育においては、次世代の担い手となる子どもたちが、その可能性を最大限に発揮できるよう、主体性やリーダーシップ、そして創造力を高めていくことが重要であり、くわえて、生涯にわたり、学び成長し続けられる環境づくりが求められております。
このことから、本年は、本市教育振興に関する施策の基本方針である「豊かな心を育む人づくりの推進」のため、大船渡市教育大綱に基づき、市長部局と連携を図りながら、学校教育、生涯学習、文化財など各分野の施策を積極的に展開してまいります。
以下、大船渡市教育振興基本計画に掲げる四つの施策に沿って、令和7年度の主要な事業について申し上げます。
第1に、「学校教育の充実」についてであります。
社会のグローバル化や情報化が急速に進展しており、児童生徒が抱える困難も多様化・複雑化し、学校を取り巻く環境も大きく変わってきております。
このような中、学校教育におきましては、「主体的に判断し、たくましく生き抜く子どもの育成」を学校教育方針の目標に掲げ、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」を育むことを三つの柱とし、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な推進を図るとともに、地域や関係機関と連携しながら、持続可能な社会の創り手の育成に取り組んでまいります。
はじめに、「確かな学力」の育成につきましては、全国学力・学習状況調査などから明らかになった児童生徒の学習状況や生活状況の課題について、原因や要因を探るとともに、それらの課題解決に向けて学校全体で組織的、計画的に取り組む検証改善サイクルを構築及び確立してまいります。
外国語教育につきましては、小中学校へ外国語指導助手を配置し、実践的な学びによるコミュニケーション能力を向上させ、グローバル化に対応できる人材の育成に取り組んでまいります。
ICT教育の推進につきましては、ICT支援員の配置により、教員がICTを活用した教育活動を効果的に実施できるようサポートし、一人一台タブレット端末を活用しながら、児童生徒の発達段階に応じた情報活用能力を育成してまいります。
特別な教育的支援を要する児童生徒につきましては、各学校に配置する特別支援教育支援員を増員し、児童生徒の特性や学習の状況に応じた支援を行ってまいります。
つぎに、「豊かな心」の育成につきましては、道徳教育やキャリア教育、読書活動などに加え、地域や他校との交流、ボランティア活動、郷土芸能などの体験活動を通じて、自己肯定感を高め、他者を思いやる心を育むとともに、シビックプライドの醸成に努めてまいります。
いじめや不登校などへの対応につきましては、教育相談員、心の教室相談員の配置に加え、児童生徒への定期的なアンケートの実施や、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーとの連携により、個々の状況を的確に把握し、関係機関と情報共有しながら、児童生徒や保護者へのきめ細やかな支援を行ってまいります。
また、「不登校対策大船渡モデル」により、未然防止、早期発見、組織的な対応に努めながら、学校や教育相談室と連携した学びの場の確保や、一人一台タブレット端末の活用などによる学びの手段の確保など、誰一人取り残されない学びの保障に向けた取組を充実させてまいります。
復興教育及び防災教育につきましては、大船渡市復興教育実践事例集を活用し、東日本大震災における教訓を継承しながら、多発する自然災害に備え、自己の命を守り抜く力の育成に取り組んでまいります。
つぎに、「健やかな体」の育成につきましては、体力・運動能力調査や各種健診結果を基に、現状把握や課題の抽出を行い、体育の授業などを通じて、基礎体力の向上を図るとともに、家庭と連携しながら、児童生徒の望ましい生活習慣の定着に向けた取組を進めてまいります。
部活動につきましては、引き続き部活動指導員を配置し、地域指導者の確保に努めてまいります。
また、生徒にとって望ましい環境でスポーツ・文化芸術活動を継続できるよう、学校や関係団体などと連携し、地域クラブ活動への移行を推進してまいります。
学校給食につきましては、児童生徒が正しい食の知識と望ましい食習慣を身につけられるよう指導を行うとともに、地産地消の取組を拡大し、児童生徒に地元産食材の魅力を伝え、食文化への理解を深めることができるよう取り組んでまいります。
つぎに、「教育環境の充実」につきましては、防災機能強化策として小学校4校で屋内運動場の天井改修を行うほか、各学校の状況に応じ、緊急度や優先度を考慮しながら、児童生徒が安全に学校生活を送ることができるよう、学校施設の適切な維持管理に努めてまいります。
低所得世帯への就学支援につきましては、入学に要する費用を始め、給食費や学用品費、修学旅行費、オンライン学習に係る通信費などを支援し、経済的負担の軽減を図ります。
また、スクールバスの運行につきましては、児童生徒の安全を最優先とし、運行体制及び車両管理に万全を期すとともに、新たに末崎地区から大船渡中学校への運行を実施いたします。
教職員の多忙化解消につきましては、「大船渡市立小中学校教職員働き方改革プラン」に基づき、働き方改革を推進し、教職員が児童生徒一人一人に向き合い、より効果的な指導ができる環境を整備してまいります。
学校統合につきましては、大船渡中学校と末崎中学校が統合し、本年4月に大船渡中学校を新設することから、生徒が安心して学校生活を送ることができるように支援するとともに、校舎などの改修に向けた設計を行ってまいります。
また、「大船渡市立小・中学校適正規模・適正配置基本計画」に基づき、望ましい教育環境の確保に向けて検討を進めてまいります。
つぎに、地域に開かれた魅力ある学校づくりにつきましては、コミュニティ・スクールの更なる充実を目指し、保護者や地域住民の意見を取り入れながら「地域とともにある学校づくり」を進めてまいります。
また、明確な達成目標を掲げ、家庭・地域と協働し、目標達成型の学校づくりを推進してまいります。
閉校後の学校施設につきましては、関係課と利活用に係る検討を進めながら、引き続き適切な管理に努めてまいります。
第2に、「生涯学習の推進」についてであります。
人生100年時代と言われる中、生きがいを持ちながら豊かな人生を送るために、生涯を通じて学びを深められるよう、学習機会の充実が求められております。
こうしたことから、身近な課題の解決や、社会の変化に対応するための学びなど、多様化する市民のニーズに応じた講座を開催するとともに、市のホームページやSNS、広報紙などを通じた積極的な情報発信により、市民の学習活動を促進してまいります。
また、将来の地域を担う人材育成のため、郷土の自然、歴史、文化、産業などをテーマに、市内全中学校を対象とした「ふるさと教育講座」を引き続き実施してまいります。
各地区公民館における学習活動につきましては、協働のまちづくりの状況を見据えつつ、住民相互のコミュニケーションの促進と生きがいづくりのほか、地域課題の解決を目的とした講座を実施し、学習機会の拡充に努めるとともに、施設の適切な維持管理を行ってまいります。
市立図書館につきましては、市民の情報拠点として、指定管理者の高い専門性と、効率的かつ効果的な施設の運営手法により、選書や読書活動の推進、レファレンス対応など充実したサービスを展開するとともに、移動図書館車「かもしか号」の運行や、学校への補助教材としての図書の貸出しなど、一層の利用促進に努めてまいります。
市立博物館につきましては、令和7年度に発足70周年の節目を迎えます。
総合博物館としての機能はもとより、三陸ジオパークや津波伝承における拠点施設としての役割も有することから、資料の適切な収集・保管と、調査・研究に努めるとともに、津波に関する常設展示を一部改修し、展示機能の充実を図ってまいります。
また、全国椿サミット開催に合わせた椿に係る企画展や、本市での日本最古となる植物化石の発見により関心が高まった地質に関する観察会など、市民のニーズを捉えた展示・普及活動を積極的に展開し、地域の自然や歴史への理解の促進と魅力の発信に取り組んでまいります。
さらに、博物館スクールや、「教員のための博物館の日」を引き続き実施しながら、学校との連携を推進し、施設の更なる利用促進に努めてまいります。
第3に、「生涯スポーツの振興」についてであります。
日常生活にスポーツを取り入れることは、体力の向上や健康維持はもとより、達成感や仲間との連帯感を得ることで精神的充実感をもたらし、生涯にわたる心身の健康促進につながるものであります。
さらに、スポーツには人を呼び込み、交流を促す力があることから、引き続き大船渡市スポーツ推進計画に基づき、スポーツを通じたにぎわいあるまちづくりのため、各般の施策に取り組んでまいります。
市民の身近なスポーツ活動の場として開放を行っている学校体育施設につきましては、学校と連携し適切な管理に努め、利用促進を図ってまいります。
第4に、「地域の歴史・文化資源の継承」についてであります。
地域の歴史や文化は、自然の恵みや人々の営みとともに築かれた先人たちの知恵と努力が息づく貴重な宝であります。
文化財は、その思いを後世につなぎ、郷土に対する誇りや愛着を深める大切な地域資源であることから、その保護と活用に向けた取組を積極的に進めてまいります。
また、現在、本市の歴史的魅力ある文化財を活用し、日本遺産認定に向け、鋭意取り組んでいるところであります。新たな輝きを増した文化財の魅力を国内外に発信し、その活用を一層推進してまいります。
史跡、名勝、天然記念物につきましては、「大船渡の三面椿」の樹勢回復に取り組むとともに、文化財パトロールを実施し、適切な管理と保護に努めてまいります。
さらに、文化財の魅力を伝え、市民の愛護意識の高揚を図るため、文化財めぐりや講演会を開催するなど、地域の文化資源への理解を深める機会を提供してまいります。
埋蔵文化財が存在する地域における住宅建設などの開発行為に対しましては、必要な発掘調査を行い、歴史遺産の適切な記録・保存に取り組んでまいります。
民俗芸能につきましては、活動の振興を図るため、関係団体と密に連携し、保存団体の活動や後継者育成への支援に努めるとともに、三陸国際芸術推進委員会と連携して、国内外の伝統文化との交流を通じ、その魅力を広く発信してまいります。
ユネスコ無形文化遺産「来訪神行事:仮面・仮装の神々」を構成する国指定重要無形民俗文化財「吉浜のスネカ」につきましては、保存会を始めとする関係団体と連携し、継承活動への支援を引き続き行ってまいります。
以上、令和7年度における本市の教育行政施策の概要を申し述べさせていただきました。
議員各位並びに市民の皆様におかれましては、本市の更なる教育振興のため、なお一層の御理解と御協力をいただきますようお願い申し上げます。