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令和6年度教育長演述


 令和6年2月16日の令和6年市議会第1回定例会本会議において、教育委員会の小松教育長は、令和6年度における教育行政施策について所信の演述を行いました。

 以下、その内容をお知らせします。

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 令和6年市議会第1回定例会の開会に当たり、教育行政施策について所信を申し述べさせていただきますので、議員各位を始め、市民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。

 

 はじめに、能登半島地震でお亡くなりになられた方々に対し、深く哀悼の意を表しますとともに、被害を受けられた多くの皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 教育委員会といたしましても、被災地の状況を鑑み、児童生徒の学びを止めないため、被災した児童生徒の市内小中学校への受入れや、就学に要する費用の一部の援助などを行っていく所存であります。改めて、被災された地域の一日も早い復旧と復興をお祈り申し上げます。

 

 さて、長引く不安定な国際情勢を反映した物価高騰下にあって、本市においては、人口減少、少子高齢化の進行や国際化の進展、地球温暖化への取組など、様々な課題に対応しながら、各般にわたる施策を推進しております。

 このような中、市民の心豊かな暮らしと、持続可能なまちづくりを実現するために、教育の果たす役割は、ますます大きくなっております。

 特に子どもたちは、社会が急速に変化し予測できない未来に向けて、新しい時代を切り拓き、自ら社会を創り出す人材となることから、状況を的確に捉え、柔軟に対応する資質や人間性を育むことが肝要であります。

 

 このことから、本年は、本市教育振興に関する施策の基本方針である「豊かな心を育む人づくりの推進」のため、大船渡市教育大綱に基づき、市長部局が所管する文化・スポーツを始めとする各種施策と連携を図りながら、学校教育、生涯学習、伝統文化など各分野の施策を積極的に展開してまいります。

 

 以下、大船渡市教育振興基本計画に掲げる四つの施策に沿って、令和6年度の主要な事業について申し上げます。

 

 第1に、「学校教育の充実」についてであります。

 社会の情報化やグローバル化が急速に進む中、学校では令和の日本型学校教育の構築を目指して、一人一台タブレット端末を活用した個別最適な学びや協働的な学びなど、新しい時代に対応した学びを推進しております。

 本年は、引き続き「主体的に判断し、たくましく生き抜く子どもの育成」を学校教育方針とし、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」の実現を目指し、未来を担い自らが社会の創り手となる人材の育成に取り組んでまいります。

 はじめに、「確かな学力」の育成につきましては、一人一人の学力を的確に把握し、個々の学習状況に応じたきめ細やかな指導を行ってまいります。

 さらに、授業交流会や学力向上研究委員会などの各種研修会を通じて、教員の授業力、指導技術の向上を図り、児童生徒の「主体的・対話的で深い学び」の実現に向け、授業改善を行ってまいります。

 外国語教育につきましては、小中学校への外国語指導助手の配置と、小学校の外国語専科教員との連携により、実践的な学びの中からコミュニケーション能力の向上を図り、国際化に対応した人材の育成に努めてまいります。

 また、中学生に対しましては、実用英語技能検定料を補助し、英語力の向上につなげてまいります。

 ICT教育の推進につきましては、小学校教科用図書改訂に合わせ、主要5教科に指導者用デジタル教科書を整備するとともに、ICT支援員を2名に増員し、情報活用能力の向上に努めてまいります。

 特別な教育的支援が必要な児童生徒につきましては、各学校に特別支援教育支援員を配置し、学習活動上のサポートを行ってまいります。

 さらに、通級指導教室の枠組みを広げ、ことばの教室のほか、新たに学習障がいを持つ児童生徒への指導を行い、一人一人の教育的ニーズに対応してまいります。

 つぎに、「豊かな心」の育成につきましては、道徳教育やキャリア教育、読書活動等を始め、地域や他の学校との交流、ボランティア活動、郷土芸能の伝承活動など多彩な体験学習を実施し、自己肯定感を高め、他人を大切に思いやる心やシビックプライドの醸成に努めてまいります。

 復興教育及び防災教育につきましては、地域と連携した体験学習の充実を図り、令和5年度に完成予定の大船渡市復興教育実践事例集を活用し、東日本大震災の教訓を継承するとともに、多発する自然災害等において自らの命を守り抜く資質、能力の向上を図ってまいります。

 いじめや不登校等への対応につきましては、教育相談員、心の教室相談員の配置に加え、児童生徒への定期的なアンケートの実施や、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーとの連携により、組織的に、心のケアや福祉の援助を必要とする児童生徒に寄り添った支援をしてまいります。

 また、「大船渡市いじめ防止等基本方針」に基づき、「大船渡市いじめ問題対策連絡協議会」等において情報共有を図り、教育委員会と学校との連携を強化し、いじめが起きにくい学校・学級の風土づくりによる未然防止と、早期発見・解消に向けた適切な対処を講じてまいります。

 つぎに、「健やかな体」の育成につきましては、体力・運動能力調査や各種検診の結果に基づく課題等を大船渡市学校保健会や保護者等と共有し、運動習慣の定着による基礎体力の向上や、発達段階における生活習慣の改善に向けた指導を行ってまいります。

 学校給食につきましては、食に関する正しい知識や望ましい食習慣が身につくよう指導しながら、衛生管理を徹底し、安全・安心で栄養バランスの取れた学校給食を提供してまいります。

 また、物価高騰により食材費が値上がりしておりますが、高騰分を市が負担することとし、保護者の負担を抑制してまいります。

 学校給食費の徴収につきましては、費用負担の公平性の観点から、納付相談に応じながら、適正な債権管理に努めてまいります。

 学校施設につきましては、各学校からの要望を踏まえながら、緊急度・優先度を考慮し、適切な維持管理、修繕に努めるとともに、施設の長寿命化を図るため、大船渡中学校校舎等の劣化診断や、盛小学校プールサイドの改修に向けた設計等を行ってまいります。

 低所得世帯に対する就学支援につきましては、経済的な負担を軽減するため、入学に要する費用を始め、給食費や学用品費、修学旅行費、オンライン学習に係る通信費等について支援を行ってまいります。

 また、遠距離通学となる児童生徒のスクールバスの運行に当たりましては、受託事業者と安全対策について情報共有を図り、運行管理システムや置き去り防止装置を活用して、安心安全な運行を行ってまいります。

 児童生徒の登下校における安全確保につきましては、交通安全教室や防犯教室等により児童生徒が自らの身を守る意識を高めるとともに、関係機関と連携して通学路の点検を実施し、交通安全施設整備を要望するなど必要な対策を講じてまいります。

 教職員の多忙化解消につきましては、「大船渡市立小・中学校教職員多忙化解消対策会議」等において情報共有を図るとともに、岩手県クラウド版統合型校務支援システムを導入し、教職員の業務負担を軽減させ、児童生徒一人一人と向き合い、よりきめ細やかな指導ができる環境を整えるなど教職員の働き方改革を推進してまいります。

 部活動につきましては、休日における学校部活動の地域連携や地域クラブへの移行等、子ども達にとって望ましい環境を確保できるよう検討を深めるとともに、部活動指導員を拡充して地域指導者の確保に努めてまいります。

 学校統合につきましては、令和7年4月の大船渡中学校と末崎中学校の新設統合に向け、環境の整備やスクールバスの運行ルートの協議など必要な準備を進めるとともに、引き続き「大船渡市立小・中学校適正規模・適正配置基本計画」に基づき、取り組んでまいります。

 つぎに、地域に開かれた魅力ある学校づくりにつきましては、コミュニティ・スクールの更なる充実を図り、保護者や地域住民の意見を反映させながら「地域とともにある学校づくり」を進めてまいります。

 また、明確な達成目標を掲げ、家庭・地域と協働する開放的で個性的な学校づくりを目指してまいります。

 閉校後の学校施設につきましては、適切な管理を行い、地域の御意見を踏まえながら、引き続き利活用に係る検討を進めてまいります。

 

 第2に、「生涯学習の推進」についてであります。

 人生100年時代と言われる中、新しい価値観・生き方への転換を促す学びとその支援は、豊かな人生の実現に不可欠であります。

 こうしたことから、情報化・国際化やリカレント教育の視点・観点をより意識しつつ、市民ニーズに対応した講座を開催するとともに、市のホームページやSNS、広報紙等を通じた積極的な情報発信により、市民の学習活動を促進してまいります。

 また、将来の地域を担う人材育成のため、郷土の歴史、文化、自然、産業等をテーマに、市内全中学校を対象とした「ふるさと教育講座」を引き続き実施してまいります。

 さらに、公民館、図書館及び博物館につきましては、社会教育施設として機能の向上を図り、学習環境の充実に努めてまいります。

 各地区公民館における学習活動につきましては、地域住民相互のコミュニケーション促進と生きがいづくりのほか、地域課題の解決を目的とした講座を実施し、学習機会の拡充に努めるとともに、施設の適切な維持管理を行ってまいります。

 また、地域公民館につきましては、コミュニティ活動の充実に向け、老朽化した施設の整備費用に対する支援を実施し、安全性や機能性の強化に努めてまいります。

 図書館につきましては、地域の知の拠点として、指定管理者の高い専門性と効率的、効果的な施設の運営手法により、選書や読書活動の推進、レファレンス対応など充実したサービスを展開し、市民が求める情報や知識を適切に提供するとともに、積極的に情報発信を行い、各種サービスの認知度向上と一層の利用促進に努めてまいります。

 博物館につきましては、総合博物館としての機能はもとより、三陸ジオパークや津波伝承における拠点施設としての役割を有することから、資料の適切な収集・保管と関連する調査・研究に努めるとともに、常設展示を一部改修し、地震・津波発生メカニズムに係る資料を加え、展示機能の充実を図ってまいります。

 また、小学3年生から6年生を対象とする博物館スクールや、気仙管内の博物館等の共同による「教員のための博物館の日」等を実施し、学校連携を推進するほか、生物観察会や釣針製作会、博物館講座、学芸員による展示解説など、地域の自然や歴史への理解を深めるための展示・普及活動を積極的に展開し、施設の更なる利用促進に努めてまいります。

 

 第3に、「生涯スポーツの振興」についてであります。

 日常生活にスポーツを取り込むことは、体を動かすという人間の本源的な欲求はもとより、達成感や他者との連帯感など精神的な充足が図られ、市民の心身両面にわたる健康保持に資するものであります。

 さらに、交流人口の拡大や地域コミュニティの促進など、多様な意義を有することから、引き続き大船渡市スポーツ推進計画に基づき、スポーツに対する市民の関心を高め、スポーツ機会の拡充など各般の施策に取り組んでまいります。

 また、大船渡市スポーツ施設整備基本計画に基づき、中・長期的な観点から、施設の効果的・効率的な管理運営に取り組み、利用者の安全性や快適性の向上を図ってまいります。

 学校開放を行っている屋外運動場や屋内運動場につきましては、学校と連携し適切な管理に努め、身近なスポーツ活動の場として、利用促進を図ってまいります。

 

 第4に、「地域の歴史・文化資源の継承」についてであります。

 今日まで守り伝えられてきた地域の歴史や文化は、先人達の思いをつなぐ宝であります。文化財は、その価値を再認識させ、郷土への誇りと愛着を育む貴重な地域資源であることから、その保存と活用に向け、積極的に取り組んでまいります。

 史跡・名勝・天然記念物につきましては、文化財パトロールを実施し、適切な保護管理を行うとともに、史跡の保存と活用を目的として、国指定史跡の大洞貝塚の公有化を進めてまいります。

 さらに、文化財の魅力を伝え、市民の愛護意識の高揚を図るため、文化財めぐりや講演会等を実施してまいります。

 有形文化財につきましては、経年等により劣化が見られることから、美観修復の支援に努めてまいります。

 埋蔵文化財包蔵地内における住宅建築等の開発行為につきましては、必要な発掘調査を実施し、歴史遺産の適切な記録・保存に取り組んでまいります。

 旧吉浜地区公民館を転用した吉浜倉庫は、大船渡市公共施設等個別施設計画に基づき、解体を行い、施設の集約化を図ってまいります。

 民俗芸能につきましては、活動の活性化を促進するため、関係団体との連携を密にし、後継者育成等の支援に努めるとともに、三陸国際芸術推進委員会の構成員として、多彩な伝統文化との交流等を通じ、国内外に広くその魅力を発信してまいります。

 ユネスコ無形文化遺産「来訪神行事:仮面・仮装の神々」を構成する国指定重要無形民俗文化財「吉浜のスネカ」につきましては、保存会を始めとする関係団体と連携し、継承に係る支援を継続してまいります。

 

 以上、令和6年度における本市の教育行政施策の概要を申し述べさせていただきました。

 議員各位並びに市民の皆様におかれましては、本市の更なる教育振興のため、なお一層の御理解と御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。