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令和5年2月17日の令和5年市議会第1回定例会本会議において、教育委員会の小松教育長は、令和5年度における教育行政施策について所信の演述を行いました。
以下、その内容をお知らせします。
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令和5年市議会第1回定例会の開会に当たり、教育行政施策について所信を申し述べさせていただきますので、議員各位を始め、市民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。
さて、新型コロナウイルスは依然として沈静化と拡大を繰り返し、不安定な国際情勢を反映した物価高騰下にあって、本市においては、人口減少、少子高齢化や急速に進むデジタル社会への対応など、喫緊の課題に対応しながら、持続可能なまちづくりに向け、各般にわたる施策を推進しております。
このような中、全ての市民が心豊かに暮らし続ける社会の実現を図るためには、一人一人がその可能性を十分に発揮できるよう、社会の変化に的確に対応する知識や判断力、人間性を備えた人づくりが、肝要であります。
特に、教育が担う役割は、超スマート社会の創り手となる児童生徒の育成はもとより、生涯を通じて学び成長し、社会の形成に参画する人材の育成など、全ての人づくりの礎となるものであり、学びに向かうための環境づくりと併せ、教育の重要性は高まるばかりであります。
このため、本年は、本市教育施策の基本方針に「豊かな心を育む人づくりの推進」を掲げ、大船渡市教育大綱に基づき、大船渡市総合教育会議等において市長部局が所管する文化・スポーツを始めとする各種施策と連携を図りながら、学校教育、生涯学習、伝統文化など各分野の施策を積極的に展開してまいります。
以下、大船渡市教育振興基本計画に掲げる四つの施策に沿って、令和5年度の主要な施策について申し上げます。
第1に、「学校教育の充実」についてであります。
学校では、一人一台端末の整備を契機として、ICTを活用した学習活動を本格化させるとともに、コミュニティ・スクールの創設により地域との連携、協働を一層深めるなど、コロナ禍の制限下であっても、新たな時代に対応した令和の学びを着実に推進しております。
こうして迎えた本年は、引き続き「主体的に判断し、たくましく生き抜く子どもの育成」を学校教育方針とし、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」の実現に向け、時代の変化に即した指導を行いながら、多様な子どもたちの個性を最大限に生かし、未来を生きる力を育んでまいります。
はじめに、「確かな学力の育成」につきましては、「主体的・対話的で深い学び」を実現するため、各種調査等を積極的に活用し、課題解決を図りながら、個々の学習状況に応じた指導を行ってまいります。
さらに、授業交流会や学力向上研究委員会を充実させ、全ての学校で共有しながら、教職員の指導力強化と授業改善を行い、児童生徒の資質と能力の向上に努めてまいります。
外国語教育につきましては、外国語指導助手を配置して、小中学校における教員の外国語指導を支援し、言語能力の向上と国際化に対応した人材の育成に取り組んでまいります。
中学生に対しましては、実用英語技能検定料を補助し、総合的な英語力の養成につなげてまいります。
また、ICTを効果的に活用した個別最適で協働的な学びの充実を図るため、主要5教科に指導者用デジタル教科書を導入するとともに、ICT支援員を配置し、学習の質の向上に努めてまいります。
特別な教育的支援が必要な児童生徒につきましては、広く相談窓口を設けて迅速に対応した上で、各学校に支援員を配置し、一人一人の教育的ニーズを把握し、的確な指導を実施してまいります。
次に、「豊かな心の育成」につきましては、道徳教育やキャリア教育、読書活動等を始め、地域や他の学校との交流、ボランティア活動、郷土芸能の伝承活動など多彩な体験学習を実施し、自己肯定感を高め、他人を大切に思いやる心や郷土愛を養ってまいります。
復興教育及び防災教育につきましては、地域と連携した体験学習の充実を図り、各学校の実践を事例集にまとめて共有し、東日本大震災の教訓の継承と、多発する自然災害等において自らの命を守り抜く力の育成に取り組んでまいります。
いじめや不登校等への対応につきましては、教育相談員、心の教室相談員の配置に加え、児童生徒への定期的なアンケートの実施や、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの巡回相談等により、個々の状況を的確に把握するとともに、保護者や関係機関等との連携に努め、心のケアや福祉の援助を必要とする児童生徒をきめ細やかに支援してまいります。
さらに、「大船渡市いじめ防止等基本方針」に基づき、「大船渡市いじめ問題対策連絡協議会」等において情報共有を密にし、迅速で的確な対策を総合的に講じてまいります。
次に、「健やかな体の育成」につきましては、体力・運動能力調査等を活用し、大船渡市学校保健会や保護者等と課題を共有しながら、より良い運動習慣と家庭生活を含む基本的な生活習慣の定着を図ってまいります。
学校給食につきましては、食に関する正しい知識や望ましい食習慣を身につけさせながら、衛生管理を徹底し、安全・安心で栄養バランスの取れた学校給食を提供してまいります。
学校給食費の徴収に当たりましては、学校給食の安定的運営を図るとともに、費用負担の公平性を確保するため、電話や文書での催告のほか、相談のうえ計画的な納付を促してまいります。
次に、第一中学校改築工事につきましては、新校舎での授業を開始するとともに、令和5年度末の事業完了を目指し、旧校舎等の解体及びグラウンドの整備を行ってまいります。
その他の学校施設につきましては、小学校屋内運動場の照明LED化工事や天井耐震改修設計を行うほか、学校からの要望に基づき施設の維持修繕等を実施し、安全な教育環境の確保に努めてまいります。
低所得世帯に対する就学支援につきましては、経済的な負担を軽減するため、入学に要する費用を始め、給食費や学用品費、修学旅行費等を補助することに加え、新たに家庭でのオンライン学習に係る通信費について支援を行ってまいります。
また、遠距離通学となる児童生徒や教育活動を支援するスクールバスの運行に当たっては、運行管理システムや置き去り防止装置を活用するとともに、受託事業者との連絡調整を密にし、徹底した安全対策を講じてまいります。
児童生徒の登下校における安全確保につきましては、関係機関と連携して通学路の点検を実施し、必要な対策を講じるとともに、地域の協力を得て安全指導の徹底を図ってまいります。
また、教職員の多忙化解消につきましては、児童生徒と向き合う時間を十分に確保するため、「大船渡市立小・中学校教職員多忙化解消対策会議」等において情報共有を図りながら、教職員の働き方改革を推進するほか、校務支援システム導入に向けて準備を進めてまいります。
部活動につきましては、教育課程と関連した適切な運営に努めるとともに、部活動指導員を配置し、教員の負担軽減を図りながら、休日における地域移行など持続可能な部活動の在り方について、引き続き検討を深めてまいります。
学校統合につきましては、望ましい教育環境の構築について、保護者や地域の理解促進や合意形成に努め、「大船渡市立小・中学校適正規模・適正配置基本計画」の着実な推進に取り組んでまいります。
次に、地域に開かれた魅力ある学校づくりにつきましては、コミュニティ・スクールを核とした学校と地域の一層の連携・協働に向け、学校運営協議会を契機とした地域住民の学校運営への参画について、定着を図ってまいります。
さらに、学校と地域をつなぐ地域コーディネーターや、学習指導などの地域ボランティア、登下校の安全を確保するスクールガードを配置するなど、地域学校協働活動を促進してまいります。
閉校後の学校施設につきましては、適切な管理を行いながら、地域のご意見を踏まえ、利活用に係る検討を進めてまいります。
第2に、「生涯学習の推進」についてであります。
誰もが生涯を通じて学習機会を選択し、新たな学びに挑戦する生涯学習の推進は、自己の成長や実現という個々の人生の選択肢を広げるだけでなく、その循環によって地域社会の活力を生み出します。
こうしたことから、情報化・国際化、リカレント教育を始め、変化する社会のニーズを的確に捉えた学習機会を提供するとともに、市のホームページやSNS、広報紙等を通じて、学習情報を積極的に発信し、市民の主体的な学習活動を促進してまいります。
さらに、公民館、図書館、博物館につきましては、社会教育施設として、その機能を向上させ、学習環境の充実を図ってまいります。
地域活動の拠点となる各地区公民館における生涯学習等の活動につきましては、生活に役立つ知識や教養のほか、地域の特色を生かした多彩な講座を開設し、地域課題の解決や学習機会の拡充に努めるとともに、施設の適切な維持管理を行ってまいります。
また、地域公民館につきましては、住民に最も身近な施設としてコミュニティ活動や防災機能の充実に向け、老朽化した施設の整備費用に対する支援を実施してまいります。
図書館につきましては、指定管理者による高い専門性と効率的、効果的な施設運営を生かし、選書や読書推進、レファレンスなど各種サービスの充実と一層の利用促進に努めながら、地域文化の創造に資するよう市民が求める情報や知識を適切に提供してまいります。
博物館につきましては、総合博物館としての機能はもとより、三陸ジオパークや津波伝承における拠点施設としての役割を有することから、資料の適切な収集・保管と関連する調査・研究に努めるとともに、常設展示を改修し、東日本大震災関連資料の充実を図ってまいります。
また、小学校全学年に対象を拡大する博物館スクールや、気仙管内の教員に向けた「教員のための博物館の日」等を実施し、学校連携を推進するほか、地質観察会や縄文土器製作会、学芸員による展示解説など、地域の自然や歴史への理解を深めるための展示・普及活動を積極的に展開し、施設の更なる利用促進に努めてまいります。
第3に、「生涯スポーツの振興」についてであります。
スポーツは、身体を動かすという人間の根源的な欲求に応えるとともに、爽快感や他者との連帯感などの精神的な充足感をもたらし、市民の心身両面にわたる健康保持に資するものであります。
さらに、交流人口の拡大や地域コミュニティの活性化など、その効果は多方面に及ぶことから、引き続き、大船渡市スポーツ推進計画に基づき、各般の施策に取り組んでまいります。
また、大船渡市スポーツ施設整備基本計画に基づき、中・長期的な観点から施設の効果的・効率的な管理運営に取り組み、施設の利便性向上を図ってまいります。
児童生徒の運動及びスポーツにつきましては、健康の保持増進及び体力の向上を始め、コミュニケーション能力や社会性の育成など、心身の健全な発達に大きく資することから、地域や家庭と連携し、更なる充実に努めてまいります。
また、学校開放を行っている屋外運動場や屋内運動場につきましては、学校と連携して適切な管理に努め、地域における身近なスポーツ活動の場として利用促進を図ってまいります。
第4に、「地域の歴史・文化資源の継承」についてであります。
地域の歴史や文化は、先人達が残した宝であり、文化財はその魅力を再認識させ、郷土への誇りと愛着を育む貴重な地域資源であることから、その保存と活用に向け、積極的に取り組んでまいります。
史跡・名勝・天然記念物につきましては、文化財パトロールを実施し、適切な保護管理を行うとともに、国指定から90年を迎える下船渡貝塚と蛸ノ浦貝塚について、文化財めぐりや講演会等を通じて、市民の愛護意識の高揚を図ってまいります。
また、経年等により劣化が見られる有形文化財について、周辺環境の調査を実施し、保存手法の検討を行ってまいります。
埋蔵文化財につきましては、発掘調査により出土した資料の適切な記録・保存を進めながら、調査報告書の刊行など調査成果の広範な活用に取り組んでまいります。
旧吉浜地区公民館を転用した吉浜倉庫は、施設の老朽化が進んだことから、大船渡市公共施設等個別施設計画に基づき、解体に向けて設計業務を実施してまいります。
民俗芸能につきましては、関係団体との連携を密にし、コロナ禍により影響を受けた活動の活性化や、後継者育成等の支援に努めるとともに、三陸国際芸術推進委員会の一員として、多彩な伝統文化との交流等を通じ、国内外に広くその魅力を発信してまいります。
ユネスコ無形文化遺産「来訪神行事:仮面・仮装の神々」を構成する国指定重要無形民俗文化財「吉浜のスネカ」につきましては、保存会を始めとする関係団体と連携し、継承に係る支援を行ってまいります。
以上、令和5年度における本市の教育行政施策の概要を申し述べさせていただきました。
議員各位並びに市民の皆様におかれましては、本市の更なる教育振興のため、なお一層の御理解と御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。